ヴィリニュス中心部を流れるネリス川にはいくつかの橋が架けられていますが、そのうちの一つである「グリーン・ブリッジ」は観光名所としても有名です。この橋の両端には、ソ連時代に造られた4種類の像が立っていました。
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 これは労働者。左の人はレンガと左官がペタペタする道具(金饅というらしい)を持ち、右の人は肩に傘をかついでいます。「立ち上がれ!同志たちよ!」とか言ってそう。
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 農民。女性が持っているのは麦の束。「希望の種をまこう!」みたいな。
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 兵士。「祖国のためにィ!」
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 学生。「明日のためにィ!」・・・男が手に握ってるのは「プラウダ」ですかね。新聞それしかなかったもんね。
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 人間が写実的で銅像としての完成度が高いのはもちろんなのですが、全体にただよう共産主義臭が外国人の目には新鮮に映りますよね。しかし、共産主義アートって「人物の顔を斜め上に向けること」という決まりがあるんですかね。「できるだけ仁王立ちで」とかね。これは北朝鮮のポスター。みんな斜め上向きすぎ、仁王立ちしすぎです。
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 さて、像の話に戻りますが、リトアニアでは独立と同時にこういうものはほとんど撤去されたらしく、グリーンブリッジは博物館以外でソ連時代の遺物が放置されている珍しい事例でした。リトアニア人の中には「過去の苦しみを忘れないために残してくれ」という人もいたようですが、大部分は「早く撤去してくれ」と思っていたようです。しかし、文化遺産で保護されているため撤去は不可能とされていました。1953年に建てられたので近年は老朽化も問題になっていましたが(確かに良く見るとところどころ錆びていた)、予算の問題で修繕も先延ばしにされていました。
 ところが、2014年11月に転機が訪れました。文化遺産に関する法が改正され、「ナチスの旗、紋章、カギ十字、SS(親衛隊)のマーク、ソ連やリトアニア・ソビエト社会主義共和国の旗、(共産主義の)ハンマーと鎌のシンボル、ソ連の五芒星」を含む作品や、ナチスやソヴィエトに関わった人物を題材にした作品は文化遺産に含まれないということが決定したのです。これによってグリーンブリッジの像の撤去が法的に可能になり、像の命運はヴィリニュス市長に託されることになりました。そして2015年7月下旬、ついに市長が決断を下し、像が橋から取り外されたのです!筆者は4~6月にリトアニアに行ったので、ギリギリ見られてよかったです。ちなみに、撤去費用は38000ユーロだったようです。

 ↓撤去の様子。
 

 像が意外とデカかった。
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 像は修繕され、ソ連時代の像を保存している施設や団体に譲り渡される予定です(すでに渡された?)。現在、像のあった場所にはとりあえず花の植えられた鉢が載せられています。彼氏の話によると、現在リトアニアでは像の代わりに新しく置くもののアイディアを公募しているらしいです。次に何が置かれるのでしょうか?楽しみです。個人的にはペルクーナスなどの多神教の神々だったらいいなぁ~と思っています。
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※個々の像の写真はウィキから、花の画像はDelfi by Lithuania Tribuneからお借りしました。

参考:
Elta EN, "Part of Vilnius Green Bridge statues removed", Delfi by Lithuania Tribune, 2015/7/20
Elta EN, "New law may ease removal of Soviet sculptures from Vilnius Green Bridge"Delfi by Lithuania Tribune, 2014/11/14